最近の話ですが、ふと思うことがありました。
「どうやってみんな服選んでるんかなぁ〜」と。
現代のファッションシーンを見返すと
まず、使う色の種類が非常に少なくシンプルな服装が人気かなと。
モノトーンばっかりでデニムも穿くことがほとんどなく
ましてや服にお金を使うこと自体が少ない
首都圏をはじめ、多くのファストブランドが店舗拡大を行い
それに伴う人気を集めている印象です。
いいものを一生かけて”育てる”という考え方自体も
非常に古臭く考える若者もおそらく少なくはないと思います。
実に面白くない。
そして少し寂しいなとも思います。
なので90年代をはじめ、街にいる皆が輝いて見えた
活気のある90年代が僕は好きなのかもしれません。
服を選んで買う。
その行為において一番重要視するポイントに関して
今一度考えていきたいと思いますが、
皆様はどこに比重を置いて考えていらっしゃいますか?
僕に関してはやはり生地かなと思います。
デザインや機能美に関しても非常に惹かれることが多くありますが
やっぱりも気に入った生地や生地に対する裏付けや
仕掛けを発見したりレクチャーしていただいときの感動は
やはり格別で、魅力に感じてしまいます。
そして今回は前回もお話の最後に告知いたしましたが
ある生地についてのお話です🐯
ここまで長かったなぁ。笑
〜シエラデザインズの誕生〜
1955年 アメリカ合衆国
カリフォルニア州バークレーに住む2人のアメリカ人男性によって誕生。
きっかけは2人に起こった奇跡とも言える出来事でした。
アウトドアが大流行した1960年代初頭
もちろん彼らもそのムーブメントにどっぷり浸かり
キャンプをはじめとしたアウトドアにしっかりとハマり
人生を謳歌していたのですが
ある日、いつも通り海でボートを使って海で遊んでいたとき、
急な天候の悪化で2人は荒波に飲み込まれ
だだっ広い海で遭難する事態に。
しかし、、
九死に一生を得て奇跡的に生還!!
その時思ったそうです。
「自分たちが着ているウェアが、緊急時には生命を左右する。」
驚異的な落ち着きで僕には絶対に出ない言葉だと
胸を張って言えます。笑
そしてこの経験を糧に
「命を委ねることのできるウェア作り」
をモットーにシエラデザインズは誕生し、
現代でも世界中で愛されています。
ー
さて、ファンションがお好きな方々ならば
必ず一度は聞いたこのある素材があると思います。
例えば、カシミアやウールにシルク
それらは天然繊維で太古の昔より人間の営みと
密接に関わりながら現代まで大切に世界各地での
伝統的技法や文化のもと語り継がれています。
今回注目するのは人工繊維と天然繊維の混紡素材。
そして見た目の華やかさと機能美もピカイチの
ロングロングロングセールスアイテム。
シエラデザインズが誇る最高傑作
その名も、
”ロクヨンクロス”
正式名称 : 60/40 Nylon Cloth
なぜ、ロクヨンと呼ばれるのか。
先ほどもお話ししましたが、2種類の繊維を混紡して誕生した素材で
横糸に綿を使用し、縦糸に”ナイロン”素材を使用した生地です。
以上!!
SIERRA DESIGNS(シェラデザイン)Line-up page
んなわけございません。笑
どんどん詳しくいきましょう〜!
シエラデザインズの中でも
”ヘリテージライン”となるものが存在し、
そこで使われている生地こそがロクヨンクロス。
作成されるウェア全てにおいて
完全アメリカ産の60/40クロスを使用。
まず生機(キバタ)と呼ばれる、
染める前の生地が東海岸で織られ
五大湖(グレートレイクス カナダとの国境付近)
の南部で染色された生地は最後に西海岸で縫製され
アメリカ大陸横断を行い晴れて製品となります。
そしてアメリカ中の空気をふんだんに纏った60/40クロスで作られる製品は
船で数週間かけ日本をはじめ世界中にやってきます。
では、なにがそこまで凄いのか。
まず時間軸に戻して考えていきましょう。
現代の発展した科学力。
そして技術力は先代から培った叡智の結晶を
アップデートしファッションに落とし込んで発明されたのもが多く
代表作を挙げるならば、
ユニクロが産んだ世界的にも非常に価値が高い”ヒートテック”
日本人がものづくりを行う上で最も長けた能力は
”既存のものを進化させる”
その日本人の技術力を紐解いても
開発能力に関しては全く疑う余地がありません。
しかしながらロクヨンクロスが誕生したのは
今から遡ること約60年前
日本ではまだ沖縄県がアメリカの占領地でパスポートが必要な時代
アメリカではベトナム戦争やロシアとの冷戦と混沌とした時代。
現在と比較しても圧倒的な技術の差があります。
そんな時代に誕生したロクヨンの機能は
非常に画期的であり衝撃的な機能美を持った生地でした。
まず初めに撥水機能
横糸の綿(天然繊維)が水を吸うと膨張する。
すると糸の間の目がみるみるうちに詰まり、
水を通しにくくなります。
それにナイロン(人工繊維)特有の撥水性能が合わさり、
水をはじくことができるようになります。
つまり、濡れることによって
はじめて撥水機能が誕生します。
現代ではフィルム型の透湿防水素材が開発され、
完全防水のジャケットが作られるようになりましたが
この60/40クロスが生まれたのはその前の遠く昔のお話で、
完全防水とまでは言えませんが、
当時の多くのアウトドアマンを雨風から守ってきました。
次に混紡繊維が生み出す”風合い”についてです。
横糸に綿を約60%、縦糸にナイロンを約40%使った
この特殊な配合は独特の光沢と風合いを演出します。
これはSIERRA DESIGNSの一つのテーマでもある
「クラフト感覚」
つまりは手作りの風合いを確保するのに
非常に重要な事なのです。
使えば使うほど味が出ると言われているこの風合いは
ロクヨンクロス登場から半世紀たった今でも信奉される一番の理由です。
混紡素材でありながらも
まるでデニム生地のような経年変化を楽しめる。
それでいながら決して機械的でなく、自然な風合いでの変化が発生し
服が好きな方の本能をくすぐり”育てる衣服”へと昇華していきます。
そして僕自身
一番大切にしているポイントが”強度”
ロクヨンの性質上、ナイロン糸が一方向(縦)に使用されてるため、
引き裂き強度、摩擦強度、対引っかけ傷に大変優れています。
なので多少の引っ掻き傷では全くびくともしないですし
ガシガシ着用していただける圧倒的な強度が確実に存在します。
また、横糸に綿を使用している為、100%の化学繊維よりも
耐火性に優れています。
60年の時を経た今でも科学の力が古の叡智を超えることができません。
それこそファッションの浪漫であると思います。
当時のアメリカ産業はまさに”質実剛健”
大量生産型のビジネスに沿って誕生した名作の数々は
時がたった今でもヴィンテージとして
日本をはじめ、世界中で愛され親しまれています。
今回の名作に関しても
いつの時代まで続くのか、、、
永遠のものはこの世の中には決して存在しません。
現にシエラデザインズでも原産国製の製品が減ってきています。
非常に寂しくもありますが
その時代に生きる我々にとってできることは
その製品を慈しみ、愛し、着用する。
それしかできないと思います。
作り手の想いを汲み取り、自身のスタイリングに組み込む。
そうすることで豊かな服育が誕生。
そしてまた多くの時間をかけて裾野を伸ばし屈強な文化へと成長していきます。
皆様にもいっぱいお洒落を楽しんでいただければと思います。
坂本
SIERRA DESIGNS(シェラデザイン)Line-up page
※シエラデザインズに使用されている60/40クロス生地は
シエラデザインズにより商標特許を取得しています。